学校までが遠いせいか、最近何とも家を出るタイミングを引き伸ばしている。移動の開始が億劫なのである。案の定、出かけ支度も片手間に、拙僧はケーブルTVでファーストガンダム(知らない人は、アムロが主人公の一番古いやつ、または遺憾ながら、一番地味なやつと思って頂ければそうそう間違いはない)の劇場版第三弾に見入っていた。八十パーセントか…。ララァは戦いをする人では無かった!ならば同士になれ。
その後サブカルチャー志向を強めるネットサーフィングを経てようやく着替え。しかし東京事変を見に行くというのになんだってA.T.C.Q(ミドルスクールのラップグループ。かなりカッコイイ)のCDジャケットを模したTシャツを着込むのか。
色気づき香水など身につけ、歯も磨き顔も洗い、兄にジーンズを借りんときゃつの部屋を訪ねると、きゃつの恋人が眠っておられた。静かにクローゼットからGAPのカーゴデニムを抜き去り、気取って指輪などを装着し、暇つぶしにと最近買った文庫本二冊をリュックに、武道館二階席ということでオペラグラスも詰め込む。
玄関口にて古びたナイキ・エアフォースワンに足を突っ込むと、古着である兄のジーンズの裾には穴が開いており、引き込まれた生地がびり、と破壊的な音を鳴らした。何も言うまい、形あるものはいずれ亡びるのだ。自転車で駅へ向かう途中、でかい空地を横切る。野球をする親子や、幼児がよちよち歩いている家族連れなどを横目に、最寄のコンビニでおあしを手にいれ、駅へ。
ほにゃらら線からちょめちょめ線へと乗り換える。車内にて、乗客の携帯電話が鳴り響く。いやあ、鳴っちまったよぉ。へへ、ごめんなさいね。などとおっさん、自分の正面の客に詫びながら、そのくせ悪びれず通話を始める。しかも車内アナウンスで駅名が噛まれるなど、こちらの旅の出だしとしてはなかなかネガティヴィティに満ちたものである。某駅で、待たせていた連れ合いと合流、一路新宿へ。サブウェイを使って九段下に着くなり、興奮のボルテイジが上がった連れは「生だよ。生はやべえよ」と卑猥極まる暴言を放ちまくる。どうにかしてほしい。
しかしボルテイジが上がっているのはこちらも同じであり、お祭り騒ぎ心が高じて、ポスターや手旗、ティーシャツ、Key.伊澤一葉が属する「あっぱ」のCDまで買う始末。この体たらく。繰り返される諸行は無常。
はてさて予測された長蛇の列に加わらんと歩を進めた直後、花輪の列を発見。おぎやはぎ、劇団ひとり、バナナマンとツボ所な芸人やシンガーのAI、蜷川実花など由縁が知りたくなるものばかり。うーん。
この前サブウェイズを見に行った時は、孤独感からもう帰ろうかと思ったが、今回は連れがいるのでばっちりである。最初の曲はなんだろうか、俺は「秘密」だと思う、ソロ名義の曲や第一期メンバーの時の曲はやるだろうか、師匠に近いと良いな、最近太ってきた、君痩せた?などなど。あっという間にチケットの半券を失い、喜び勇んで館内へと入ったのであった。無心にチケットをむしるスタッフにやや憤慨しながら西席へ。場内に入るや否や、アース・ウィンド・アンド・ファイアーを見に来た2004年9月の感動が心地よく塗り替えられてゆく。やたら高い天井、国旗、席に置かれたレコード会社関連のライブ情報、アンケート。ちょっとSalyuは観たいかな、俺はスクービードゥーが観たい。やいのやいの。肝心のステージはというと、あらま案外近いじゃないか。オペラグラスがあれば表情まで読み取れるわい。我々二人は前後で分断されたものの、極めて近い距離。なら良いじゃねえか、楽しみ楽しみ。連れがトイレに行くと、場内BGMに既聴感。なんと、NUMBER GIRLの「ZEGEN VS UNDERCOVER」じゃねえか。他にもゆらゆら帝国「発光体」椎名女史がスペシャルサンクスで参加しているモー・サム・トーンベンダー「ロッキンルーラ」などコアなものばかり。テンションももうよく分かんなくなってきて、連れと二人オペラグラスで、有名人いねえかな、おおっ着物美人、最前列の人いいねえ、うん、俺あそこ行けるなら体売っても良いよとバカ丸出しの冗談など出る始末。繰り返される諸行は無常。するとうら若き乙女が俺に話しかけてくる。ここって、西席ですよね?おお迷ってらっしゃる。それならばお助けしましょう、なんてしゃしゃり出ようと思ったら、なんのこたあない、実は俺の席が一列違って、彼女の席を塞いでいただけ。なるほどと手荷物を正規の席へと移す。するとどうしたことか、しっかり連れの左隣だ。なあんだ、これで一件落着。ごめんなさい。
開演が近づき脈拍が強くなってくる。緊張そのものだ。人間トイレに行こうと思うとしたくなってくる。10分の猶予があれば間に合うだろう。席を間違えたせいで緊張も増してしまう。しかも女子トイレばかりで男子トイレが遠い、くそう、かなり並んでるじゃねえか。手早く小用を済ませ席に戻る。するとしばらくして開演のアナウンス。
〜本編は後にアップします。昼にでも〜
体温を上げ、無事終了。堪能しつくしました。
そこまで混んでもいない電車に乗り込みまたも新宿へ。そして連れと別れ乗り換えをし、スムーズに最寄り駅に到着した。
興奮冷めやらぬ俺は、駅前の立ち食い蕎麦屋の「立ち飲みで一杯」の看板に、へへへ、こんな晩酌もオツじゃねえか、なんて気分にもなったが、幾分か疲れていてそんな気は起きず、寄り道せずに帰宅。帰り道に考えた。演奏を思い出してみようとすると、CDの音しか浮かんでこない。ライブなんてものは、あの一瞬でこそ成り立つのであり、受け取る側としてもその一瞬に傾注する。なので、CDを聴いて批評するようには扱えない。これ自然。
家を出る時は、明朝は早起きしてランニングでもして、体を絞ろうかなんて考えていたが、この日記を書きながら、そんなこたあ無理ってものだ、だってこんなに眠たいから、明日はぐうたら決め込むんだもーん、と諦めるに至った。おやすみなさい。ぐう。
唯一心残りなのは、曲の合間に叫ぶにいたって、迷った挙句「アモーレ!」と言わなかった事だ。正解かもしれない。